No.91 ヒイラギのトゲトゲ葉っぱ

写真1 ヒイラギの花(くろんどの森)
写真1 ヒイラギの花(くろんどの森)

 くろんどの森では11月半ば頃になると、八ッ橋一帯がラクウショウの落ち葉で埋めつくされ、ヒイラギの花の甘い香りがただよってきます(写真1)。

写真2 ヒイラギの花、雄株と雌株の花の違い
写真2 ヒイラギの花、雄株と雌株の花の違い

 ヒイラギはキンモクセイと同じモクセイ科で、同じような香りがします。雌雄異株で、いずれの株の花も、2本のおしべと1本のめしべを持っていますが、雄株の花のめしべは小さく花びらにうもれていて、実をつけることはありません(写真2)。私は街中では雌株のヒイラギを見た事がありません、雄株の方が花がたくさん付くからでしょうか。

 ヒイラギというと花よりもトゲのある葉を思い浮かべます。ヒイラギの名前は、昔の言葉で”ヒリヒリと痛む”を意味する”ひひらぐ(疼ぐ)”にちなんでいます。トゲトゲの葉に触ると痛いから、ひひら(疼)木と言うのですね。[1]柊(ヒイラギ)という漢字も、ひひら(疼)木から作られたようです。[2]

写真3 トゲがないヒイラギの葉(くろんどの森)
写真3 トゲがないヒイラギの葉(くろんどの森)

 先日の森林整備で、トゲがない葉をつけたヒイラギを見つけました(写真3)。トゲをつける仕組みはどうなっているのかな。

 ヒイラギの葉のトゲは、草食動物に食べられないようにするために作られると考えられています。何十年もかけて大きく育ってくると、葉のトゲがなくなります。これは、背が高くなると草食動物が葉に届かなくなるので、トゲをつける必要がなくなるからと考えられています。植物は光合成をすればするほど糖の合成が進み、ヒイラギはそれを感知して自分の体の熟成を知り、葉の形や大きさを変えていくらしいです。[3]

写真4 ヒイラギの老木の葉(大阪公立大学附属植物園)
写真4 ヒイラギの老木の葉(大阪公立大学附属植物園)

 写真4は、ほしだの森の近く、大阪公立大学附属植物園にあるヒイラギの老木で、樹齢60年位、高さが4mもあります。確かに上部(樹冠)の葉にはトゲがありません。幹から別れた高さ1.5m位の細枝の葉にはトゲがあります。この木は枝を切られた跡があって、この枝はまだ若いのでトゲを付けているように思われます。

 大阪では北摂を中心にシカが生息していますが、府民の森がある生駒・金剛山地には、シカ(ニホンジカ)やカモシカ(ニホンカモシカ)のような大型の草食動物はまだ住み着いていません[4][5]。この状況が何千年何万年も続けば、府民の森のヒイラギは、トゲトゲ葉っぱをつけることをやめているかもしれませんね。

(ます 2022/12/3)

【参考文献】

[1] ひひらぎ、牧野日本植物図鑑インターネット版 p.219

https://www.makino.or.jp/fixed/?page_key=dr_makino-book

 

[2] ヒイラギ、語源由来辞典 

https://gogen-yurai.jp/hiiragi/

 

[3] 植物の鋸歯について、みんなのひろば 一般社団法人日本植物生理学会、(2019.07.16)

https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4479

 

[4] 大阪府南部のシカ、大阪府、2022.9.16

https://www.pref.osaka.lg.jp/doubutu/yaseidoubutu/sika_nanbu.html

 

[5] 大阪府内で初めてニホンカモシカを確認しました!、環農水研生物多様性センター、2022.07.15

http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/kankyo/info/doc/2022070700053/

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