ほしだの森の近くを散策してたらフユヅタ(冬蔦)が木を覆うように茂っていました(写真1の黄色の点線)。フユヅタ(冬蔦)はキヅタ(木蔦)の別名です。葉がツタに似ていて、冬でも葉が枯れないことからフユヅタと言われています。フユヅタは成長すると葉の形を変えるので、つぼみの近くの葉はツタに似ていませんが(写真1右上)、若い葉はツタに似ています(写真1右下)。
このフユヅタは、もうすぐ花を咲かせそうです。別の場所で咲いていた花*1をよく見ると、花の真ん中の丸い部分に蜜を出してキラキラと光っています(写真2)。フユヅタの花にはスズメバチ*2やハナアブの仲間がよくやってきて蜜を吸っています。
フユヅタ(冬蔦)と対比してツタ(蔦)のことをナツヅタ(夏蔦)と言いいます。ツタは梅雨の頃に花を咲かせ、秋になると赤く紅葉して葉を落とします。森の中では、スギやヒノキの林で木をよじ登っている姿をよく見かけます。花もフユヅタ(冬蔦)と似ていますね(写真3)。でも、フユヅタ(冬蔦)はウコギ科、ナツヅタ(夏蔦)はブドウ科で同じ仲間ではありません。
フユヅタとナツヅタ、どちらも、他の植物や人工物を支えにして茎をのばしていく”つる植物”です。フユヅタは空中の根(気根)、ナツヅタは小さな吸盤*3から、粘着性の物質[1]を出して、木や壁をよじ登ります。秋に青い実をつけるノブドウは、ナツヅタと同じブドウ科の仲間のつる植物ですが、吸盤はなく、葉のつけねから出る巻きひげを使って草の茎に絡みつきます(写真4)。フユヅタやナツヅタは、大きな木、壁や人工物の支柱をよじ登り、ノブドウは草の茎や金網に絡んでいる姿をよく見かけます。つる植物といっても、それぞれに違いがありますね*3。
さて、ツタというと甲子園球場を思い浮かべますが、甲子園のツタはフユヅタ、ナツヅタ、どちらでしょうか? 答えはコチラ
フユヅタとナツヅタは、山地だけでなく、都心でもビルの緑化としてよく見かけます。これからの季節、フユヅタの花やナツヅタの紅葉が楽しめます。つる植物が取り付く仕組みも観察してみて下さいね。
(ます 2022/10/23)
【より深く知りたい方へ】
*1 フユヅタの花のつくりとよく似た花
5枚の花びらの間から5本のおしべが伸びています。めしべは、花盤(かばん)と呼ばれる、花の真ん中の丸い部分の中心で少しふらんだ緑色のところにあります(本文の写真2)。
フユヅタと同じ仲間でウコギ科のヤツデは、よく似た花のつくりをしています(補足写真1)。ヤツデは花が少ない冬に花を咲かせ、フユヅタと同じように、花盤に蜜(みつ)を出します。冬でも、気温が上がった日には、ハナアブやハエがやってきて蜜を吸い、その際に花粉を運んでくれます。
*2 フユヅタのつぼみにもやってくるスズメバチ
ほしだの森の近くで、別のフユヅタを見ました。ここにもスズメバチがやってきました(補足写真2)。ところが、このフユヅタはまだ花を開いていません。スズメバチは大きなあごを使い、つぼみをかじって、蜜(みつ)を吸っているのかもしれませんね。フユヅタにとっては、花粉を運んでくれないので、困ったものです。
*3 その他の取り付き方
空中の根(気根)、吸盤(ナツヅタの吸盤は、巻きひげの先にできたものです)、巻きひげの他にも、サルトリイバラのようなトゲ(棘)、カギカズラのようなカギ(鉤)で、草の茎に絡む仕組みがあります(補足写真3)。また、フジの仲間もつる植物ですが、特別な仕組みをもたず、若い茎が草木に絡んでいきます。
【参考文献】
[1] ツタの吸盤、みんなのひろば 一般社団法人日本植物生理学会、(2010.7.14)
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