早春のくろんど園地で、 産卵 のため、池にやってくる二ホンアカガエルの様子を、赤外線カメラで記録していた時、予想外の動物が写っていた(*1)。
真夜中に飛ぶ鳥! 何だろう?
秋になると、別の池にフクロウ(*2)が現れた。首をクルクル回して、大きな目で獲物をさがしてる。フクロウの耳は目の横にあり(*3)、平たい顔を使って、音を集める。耳の穴の位置が左右でずれていて、夜でも獲物の場所を正確に知ることができるんだ(参考文献1)。
フクロウはネズミが大好物(参考文献1)。森のネズミは、夜になると、木の実や種などのエサをさがして、すばやく走り回る。フクロウは木の枝に止まって待ちぶせし、ネズミが走り回る小さな音を聞くと、木の枝から飛び出し、太い足と大きな爪でネズミをつかまえてしまう。
フクロウは、ネズミに気づかれないように、静かに飛ぶことができる。羽根のへり(縁)は、くしのようにギザギザに細かく分かれていて(写真1)、羽ばたく音が静かになる。新幹線のパンタグラフに、同じ仕組みが使われていて、走行時の騒音をへらしてくれる(参考文献1)。すごいぞフクロウ。
フクロウは。春から初夏にかけてに、大きな木に開いたうろ(洞)の中に巣を作って(写真2)、産卵・子育てをする【ご注意】。
フクロウがくらしていくには、ネズミのようなエサとなる生きものがくらせる場所、木から飛び出して狩りができる見通しのよい場所、昼間に休める林、そして、産卵・子育てのための大きな木の洞、といったいろいろな場所が必要だ(参考文献2)。洞のある木が少なくなっていて、フクロウにとってはくらしにくくなっているようだ。
【ご注意】
フクロウは、3月から5月頃にかけて、大きな木のうろ(洞)などで、産卵・子育てを行います。この時期は、大きな木の洞を見つけても、巣があるかどうかのぞてみたり、巣の近くでの観察や撮影をしないで下さいね。
特に、3月から4月頃の、卵を抱いている期間(抱卵期)は、人間が巣の近くにとどまると、親鳥が巣に戻らず、卵が冷えてしまったり、親鳥が巣を使わなくなる可能性が大きいので、すぐに巣のある木から立ち去りましょう。
また、木のうろ(洞)には、ススメバチやニホンミツバチが巣を作っている事があります。木の洞を観察する時は、遠くから様子を確かめてからにして下さい。
先日、くろんど園地に向かう道で、アオバトがおそわれて、羽根がちりぢりになっていた(写真3)。アオバトの羽根の軸に、くちばしではさんだあとが残っていたので、肉食の鳥のしわざだろう。タカの仲間か、もしかすると、フクロウのしわざかもしれない。
フクロウは生態系の最も上位に位置する生きものだ。フクロウが暮らせるくろんど園地は、生態系の上位から下位まで、多様な生きものが暮らせる豊かな森なんだね。
<ます、YS、IH 2022/06/02>
【補足説明】
*1 ほかには、アライグマやタヌキ(ホンドタヌキ)が何度も写っていました。
*2 フクロウの種類
大阪ではフクロウの仲間が数種類観察されています。一年中見られるフクロウ、夏に南から渡ってくるアオバズク(補足写真1)やオオコノハズク、冬に北から渡ってくるトラフズク(補足写真2)やコミミズクなどです。
この記事の動画にあらわれる鳥やひろった羽根は、フクロウだと思われますが、動画が鮮明でなかったり、羽根に個体差があったりするので、トラフズクなど他のフクロウの仲間の可能性も残っています。
*3 フクロウの耳
フクロウの仲間には、トラフズク(補足写真2)のように頭の上に耳が立っている種類がいます。実は、耳のように見えるのは毛で、木に似せて敵にみつからないようにするためと考えられています(参考文献1)。フクロウの仲間の耳は目の外側横にあります。
【参考文献】
1.柴田佳秀、おしえてフクロウのひみつ、子どもの未来社、2019年2月
http://comirai.shop12.makeshop.jp/shopdetail/000000000238/
フクロウの体の仕組み、食べ物、巣や子育てなどが、わかりやすく解説されています(小学校高学年以上向け)。
2.芦朋也・畠中浩・稲葉正男(2022.02.28)、HSIモデル フクロウ、全7頁
http://www.jsia.net/HSIHP/file/fukuro.pdf
環境アセスメントなどで、ある場所の環境が対象とする生物にとって生息適地かどうか判断するために、野生生物(この場合はフクロウ)の生息環境の定量的な評価指標 HSI(Habitat Suitable Index)を算出するためのモデルを記載したものです。専門的ですが、フクロウの生活史、生息環境(営巣・生息・採食)について、豊富な参考文献と共に、簡潔にまとめられています(一般向け)。