新緑のくろんど園地を歩いてると、面白い形の植物に出会いました(写真1)。ウラジロの葉の間から、茎がにょきにょきと出て、最も高い所は3m位まで伸びています。途中で2つに分かれてY字形になり、小さな葉が生え始めてます。下の方に生えている別の茎を見てみると、あれ?Y字形の茎がウラジロの葉の付け根から出てます(写真2)。にょきにょきと出ていたのはウラジロの新しい葉だったのですね。
ウラジロは、本州中部より南の地域で、日当たりのよい斜面などに見られる、常緑のシダ植物です。お正月の縁起物として、鏡餅の下に敷かれたり(写真3)、しめ縄の飾りに用いられてます。ウラジロの葉は一対で、裏側が白っぽいので(写真3 左上)、「共に白髪が生えるまで夫婦がよりそって暮らす」ことを表わすと考えられてるわけです。ウラジロは裏側を上に向けて敷かれてますね。
さて、ウラジロの新しい葉は、どのように生えてくるのでしょうか(写真4)。まず、葉の付け根にある芽から、一本の茎が伸びてきます(a)。それから先が2つに分かれて(b)、Y字形に分かれたそれぞれに一定の間隔で葉をつけ(c)、十分に伸びて(60cm~1m)葉が出そろうと、葉がだんだん水平に下がってきて(d)、やがて今年のウラジロの葉のように、前方下向きにたれてきます(e)。
こんどは、ウラジロの全体を見てみましょう(写真5)。今の時期は、長さ1m位の新しい葉が上向きに伸びていて、ウラジロの最も高い所は3mに達してます。新しい葉の下、高さ2m位のところと1m位のところに、ウラジロの葉が2段に重なり合って生えています。どうやら、ウラジロの葉は3段重ねになっているようです。
本州中部では、3段で高さ2m位(新しい葉が上向きに伸びている時期は3m)が限界のようですが、熱帯では、何段にも重なり、高さ10mにまで成長するらしいです(参考文献1)。
また、ウラジロは地下に茎を拡げて大きく成長していきます。もしかすると、写真5の大きなかたまりは、1つの株かもしれません。この、3段重ねの葉と地下茎の立体的な成長の様子を図1にまとめてみます。
ウラジロがお正月の縁起物として用いられるのは、「共に白髪が生えるまで」の夫婦円満だけではなくて、毎年新しい葉を拡げ、一対の葉が積み重なっていく姿が、子孫繁栄も意味するからと考えられています(参考文献2)。
ウラジロの一対の葉を、茎を付けた状態で手にもって、高い所から離すとグライダーのようによく飛びます。3段重ねの葉を飛ばしたら、昔の飛行機のようにうまく飛ぶのかな。
新緑の時期ならではのウラジロに出会って、いろんな気づきがありました。
<ます 2022/05/20>
【参考文献】
(1)wikipedia, ウラジロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%AD
(2)和歌山県農林水産総合技術センター林業試験場, 木の国森の資源の活かし方<技術指針N0.3> ウラジロ
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070100/070109/gaiyou/006/seika/pamphlet/d00157498_d/fil/wakayama_urajiro.pdf
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