■ 夏に咲く木々の白い花
5月の中旬から7月にかけては、府民の森の木々に白い花が目立ちます。そして、多くの虫たちが蜜を吸いに白い花にやってきます。エゴノキ、ヤマボウシ、ウツギの仲間、イボタノキ、スイカズラ、テイカカズラ、ナツツバキなどなど(写真1)。花の形やつき方がそれぞれ違っていて、やってくる虫の種類も違います。エゴノキの花は枝にぶら下がるようについていて、飛ぶのが上手なハナバチの仲間がやってきます。ヤマボウシの花(*1)は上向きに少し突き出ていて、白い苞(ほう)を足場にして、小さなチョウの仲間が多く集まってます。イボタノキやスイカズラでは花の奥に蜜があって、口が長いハナバチや大型のチョウが見られます。
■ ひみつ(その1)
ところで、実は白い花は無色で、色の付いた色素がないのを知ってますか?花びらにも細胞があって、細胞の間のすきまに空気が入っています。このすき間と細胞のさかい目で、光が乱反射していろんな色が混ざりあい、白く見えるのです(参考文献1)。テレビやパソコンでは、赤・緑・青の画素を付けたり消したりしながら、光を混ぜていろんな色を作ります。赤・緑・青の全てが点灯して混ざると白色に見えるのと、同じ理屈です。
ちょっと実験してみました。ヤマボウシの白い花(*1 正確には、葉が進化した苞(ほう))を、右半分をヘラで押してみました。しっかりと押すことで花びらの空気がなくなり、白い色が薄く透明のようになりました(写真2)。
ヤマボウシの実験は葉が変化した苞(ほう)で行ったので、念のため別の木の花びらで試してみました。公園に落ちていたタイサンボク、アジサイ、サツキの花びらをひらって、同じように押してみました。白いタイサンボクの花は親指で押した部分の色が薄く透けるようになりました。一方、アジサイとサツキでは、一部透明になっているところがありますが(細胞を削り落としてしまったのかもしれません)、ヘラでおした右半分では、それぞれ青紫色、ピンクが少し濃くなっているようにも見えます(写真3)。細胞のすきまの乱反射が減って白みが薄くなったのかもしれません。
■ ひみつ(その2)
白い花が実は無色ということをお分かりいただけましたか。
実は無色というのは、人の目にとって無色ということで、ハナバチやチョウなどの虫は、人の目には見えない紫外線(波長400nm以下)を見ることができます。初夏の木々の白い花には、フラボノイドという色素が含まれています。このフラボノイドは人の目に見えない紫外線の領域で色をつけて、虫に目立つようにしているのです(参考文献1,2)。
エゴノキはもう花を落とし、ヤマボウシの花も盛りを過ぎてしまいました。ナツツバキやウツギの仲間のノリウツギは、これから花を咲かせます。府民の森や近くの公園で、白い花を見かけたら、白い花のひみつを思い出して楽しんでくださいね。
【補足解説】
*1:ヤマボウシの花
ヤマボウシの白い花のように見えるのは、つぼみを包むように葉が変形した苞(ほう)と呼ばれるものです。苞の中には、人の目には無色の色素フラボノイドが含まれています(参考文献2)。ヤマボウシの花は、白い苞の真ん中に、上向きに突き出した黄緑色の球状の部分です。
【参考文献】
文献1 白い花の色素について
一般社団法人 日本植物整理学会 みんなのひろば
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1678
文献2 ヤマボウシ
筑波植物園 植物図鑑
ます(2021/6/13)