■ 新緑の中の目玉
府民の森が新緑に包まれ、夏鳥のさえずりが聞こえ始めるころ、
アケビの木*補足1の回りを探して見ると、新緑に小さな目玉が見えました。アケビの葉を食べて育つアケビコノハ*補足2のイモムシ( 幼 虫)です。
*夏鳥のさえずり* 再生ボタンを押すと聞こえます。
■ 目玉もようのやくわり
目玉もようは、イモムシをエサにする鳥に警戒させて、食べられないようにするためと考えられています。森の中で鳥をねらうフクロウや、鳥のひなや卵をねらうヘビの目玉に、似せているのでしょうか(写真2)。鳥がイモムシを食べて、その鳥を別の種類の鳥やヘビが食べるという、生き物のつながりがあるのですね。
■ 目玉の見せ方
アケビコノハのイモムシは、休んでいる時、体をまっすぐにのばしてました。風が吹いて小枝がゆれると、敵の気配と思ったのでしょうか。尾の先を持ち上げつつ、頭を内側に折り曲げ、ごけ茶色の体をくっつけて、あたかも生き物の頭に目玉があるように見せてかけているようです(写真3)。また、目玉もようは体の左右両側にあって、背中から見ても、目玉に見えます。
■ チョウやガの目玉もよう
目玉もようはチョウやガの成虫にも多く見られます。名前がヘビの目を意味するジャノメチョウやヒカゲチョウ、ヤママユガ、トモエガ、イボタガなどのガたちです(写真4)。いろんな種類のチョウやガが、それぞれが別々に進化しながら、目玉もようで敵から身を守るようになったのは、面白いですね。
府民の森では、これから夏鳥の子育てが始まり、エサをさがす活動が活発になります。アケビコノハのイモムシは、うまく鳥の目をだますことができるのでしょうか。
ます(2021/5/9)
【補足解説】
*補足1:アケビ
つる性の落葉低木、日当たりのよい山地で樹木に巻きついて生育する。4月頃、雌雄同株、雌雄異花で、赤紫色や白色の花を咲かせる(写真 補足1a)。9月頃、楕円形を長くした、10cm位の実を付ける。熟すと縦に割れて白く、甘い果肉があらわれ(写真 補足1c)、鳥や哺乳類が良く食べて、果肉の中に小さな種が運ばれる。アケビの名前は「開け実」に由来する。
*補足2:アケビコノハ
ヤガ(夜蛾)科に属する大型のガ。幼虫は終齢で75mm程度、アケビ・ムベやアオツヅラフジ、ヒイラギナンテンなどを食草にする。成虫は4月~10月に年2回発生、開帳95~100mmになり、成虫越冬する。硬い口吻を使い、ナシ、モモ、ブドウなどの果実に穴を開けて果汁を吸う。
アケビコノハは擬態の名人で、幼虫の目玉模様に加えて、成虫の前翅は枯葉そっくりに擬態し(写真 補足2)、後翅には黒い目玉模様がある(写真 補足3)。
幼虫は5~6月、7~9月頃に見られる。アケビの実はわりと目立って見つけやすいので、場所を覚えておいて、アケビの木やその周辺、特に、アケビの葉がかじられているところや、フンがある場所を探すと幼虫を見つけやすい。アケビはけっこう高くまで木に巻きついているので、双眼鏡があった方が目玉模様がよく見える。