No.67 色あざやかな裸地らちのハンター:ハンミョウ

 

写真1 ハンミョウ(ナミハンミョウ)
写真1 ハンミョウ(ナミハンミョウ)

■ ミチオシエ

 府民の森のハイキング道を歩いていたら、道の先で何かがササッと動きました。近づいたら飛んでにげてしまいました。少し先で見つけて、ようやくカメラでとれました。色あざやかでメタリックにかがやくハンミョウ(ナミハンミョウ)*補足1です(写真1)。大きく写そうと近づくと、また先へ飛んでにげました。「ミチオシエ」の別名の通り、まるで道を案内してくれているようです。

写真2 アリをつかまえたハンミョウ
写真2 アリをつかまえたハンミョウ

■ 色あざやかなハンター

 ふたたび見つけました。しばらく様子を見てみます。長い足を使って素早すばやく動いては止まり、また動きます。あっ、何かをつかまえたようです。大きなアゴでアリをはさんで、食べようとしています(写真2)。美しい姿すがた似合にあわず肉食のハンターなんですね。

 ところで、ハンミョウがアリをねらうように、ハンミョウもムシヒキアブのようなてきねらわれています。意外ですが、ハイキング道のように日が当たるすな地では、あまり目立ちません。てきに対して、カモフラージュの効果こうかがあると考えられています(参考文献1 p.71)。

写真3 配偶行動
写真3 配偶行動

■ 配偶はいぐう行動

 最初に見つけた所にもどってみると、2匹が体を重なり合わせていて、オスがアゴでメスをはさんでいます。配偶はいぐう行動のようですが、交尾こうびは行わず、すぐに別かれてしまいました(写真3)。

 メスとオスのちがいがわかるように、顔のアップをのせてみました。アゴが白いのがオス、アゴの先が緑色のがメスです。正面から見ると、大きな目と大きなアゴがハンターらしいですね。

動画1 穴へ出入り
動画1 穴へ出入り

■ 越冬えっとう用のあな

 道の山側は斜面しゃめんで、少しくずれて、植物が生えていない裸地らちになってます。斜面しゃめんにはあながいくつも開いてます。あれ?、ハンミョウがあなから後ろ向きに出てきて、向きを変えてから、またあなに入って行きました(動画1)。しばらく待ってみても、出てきません。このあなは、越冬えっとうに使っていたあなかもしれません。また休むのかな?

裸地らちらす

 ハンミョウの成虫せいちゅうは、これから、交尾こうび産卵さんらんして2~3年の一生*補足2を終えます。そして、梅雨のころに幼虫ようちゅうが生まれてきます。幼虫ようちゅう産卵さんらんされた所で、地面にまん丸いたてあなをほって、アリを待ちかまえてエサにします。そのよく年の秋に、さなぎをへて、成虫せいちゅうになります。幼虫ようちゅうのすがたを観察できたら、この記事にのせたいです)。

 ハンミョウがいた場所は、ハイキング道ぞいの、植物が生えていない裸地らちでした。何年かして植物が育ってきたりすると、穴をほって裸地らちを移動するアリを待ちかまえたり、素早すばやく動いて大きな目でアリをさがすハンミョウには、らしにくい環境かんきょうになるかもしれません(参考文献2)。そうなったとしても、ハンミョウはらしやすい場所をみつけて、また道案内をしてくれたらいいなあと思ってしまいます。アリさんには気のどくですが。

 大阪府民の森では、みだりに、動物をつかまえたり、きずつけたりすることが禁止きんしされています。ハンミョウを見つけても、取らない下さいね。

【補足解説】

 

*補足1 ハンミョウ(ナミハンミョウ)の形態・生態 

 ハンミョウはオサムシ科の昆虫で日本には25種が生息する。

この記事でハンミョウと呼んでいる昆虫は、学名を示す和名ではナミハンミョウ。ナミハンミョウは大型で色鮮やかですが、他のハンミョウは比較的小さくて目立たない色をしている。(参考文献1 はじめに)

 成虫の体長は2cmほど、裸地(土の露出した地面)を、長い足で素早く歩き、大きな目と長い触覚で、アリのような昆虫などを探し、大きなアゴで捕食する。4~10月頃にみられるが、夏に世代交代を行う。冬は穴の中で越冬し、翌春に交尾・産卵し、生涯を終える。

 幼虫の体長は2cmほど、細長い体と大きく鋭い大顎を持ち、固い裸地に円筒形の縦穴を掘り、平らな黒い頭部で穴に蓋をするようにして潜み、アリなどを待ち構えて捕食する。初夏に生まれ*補足2、3齢まで成長して越冬し、翌秋にさなぎを経て成虫になる。

 ハンミョウは漢字で「斑猫」と書くが、これは、漢方薬として重宝されていた、全く別の種のツチハンミョウと取り違えられたのではないか。なお、現在の中国では「虎甲」と書かれていて、これは、英語の「tiger beetle」の直訳ではないかとのこと。(参考文献1 はじめに)

 

*補足2 秋生まれの幼虫

 成虫の栄養状況が良い場合、成虫となった翌年の初夏ではなく、成虫となった年の秋生まれの幼虫も存在します。秋生まれの幼虫は2年後の秋に成虫になり、成虫は越冬して生涯を終えますので、3年生きることになります。なお、幼虫の発育速度には個性差が存在し、3,4年かけて成虫になるものも存在します。

 地面に穴を掘って、裸地を移動するアリなどを待つという生態では、餌獲得が環境に大きく依存するので、このような耐性が発達したのだろうと考えられます。(参考文献1 p77-80,91-92)

 

【参考文献】

1)掘 道雄(編),環境Eco選書 14 日本のハンミョウ(北隆館)(2019),p.62-101 ナミハンミョウの生態

 京都市の大学演習林に生息するナミハンミョウの個体群を8年間にわたり、幼虫と成虫の大部分を個体識別して追跡し、生活史、成長と発育、繁殖様式、や個体群の構造と動態などを明らかにした調査研究の報告。

ナミハンミョウの生態に興味をもたれた方はぜひご一読ください。

 

2)上田 哲行、掘 道雄,はくさん(石川県白山自然保護センター) 第25巻 第2号(1997)p.2-7 手取川のハンミョウ類

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/hakusan/publish/hakusan/documents/hakusan25-2.pdf

 河川性のハンミョウ類の生息場所の調査、考察を通して、水がいきいきと流れる川本来の姿の必要性を説いています。

ます(2021/4/16

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