生駒山の中部園地で、”春の目玉おやじ”をみつけました(写真1)。コケのなかまのタマゴケ*1です。目玉の部分は直径2mm、柄(え)の長さは1.5cmくらいです。
春になると、タマゴケは目玉のような蒴(さく)をつけて、蒴の中で胞子(ほうし)を作ります。胞子は風や雨水にのって運ばれて、日当たりや水分などの成育条件がうまく合うと、新しい芽を出して育っていきます*2。
タマゴケの蒴(さく)が成長する様子をまとめてみました(写真2)。
①胞子(ほうし)を作る胞子体がのびてきて、先っぽに蒴ができてきます。
②蒴がふくらんできます。タマネギのうす皮のようなものは、胞子(ほうし)のもとを作る器官のなごりです。
③蒴がまん丸になり、蒴のまんなかに、目の瞳(ひとみ)のような部分がうっすらと見えてきます。タマネギのうす皮のようなものはもう落ちています。
④蒴の緑色が濃くなり瞳のような部分が真っ赤になってきます。瞳のところは蓋(ふた)でおおわれていて、この蓋が落ちると、蒴から胞子が出てきます。
⑤胞子を出すにつれて、朔はしわしわになり、枯れていきます。
タマゴケは、おわんをひっくり返したように、真ん中がもり上がったコロニー(集まり)を作ります(写真3)。星のように開いた細長い葉っぱと、まち針のような胞子(ほうし)体は、自然が作った針山のようです。あっ、蒴の目玉が同じ方向を見つめていますよ。
タマゴケのコロニー(集まり)をもう少し離れて見てみます(写真4)。明るい黄緑色のコロニーが2つほど見えてますが、色や形が異なる他の種類のコケが生えていてパッチワークのようになっています。しかし、コケ以外の植物はほとんど見あたりません。ここは、尾根(おね)の斜面で、土の栄養が少ない半日かげです。コケは光合成をしますが、養分や水分をすい上げる根を持たず*3、空気中の水分を体の表面からとりこんで生きています。コケ以外の植物が育ちにくい場所で、コケのなかま同士が競い合いながら、くらしているのですね。
春はコケを楽しむのによい季節です。いろいろな形の蒴(さく)や、さまざまな緑色のパッチワークが美しいです。ルーペ片手にコケを眺めながら、府民の森をゆっくり歩いてみませんか?
大阪府民の森では植物の採取は禁止されています。お気に入りのコケを見つけても、持ち帰らないで下さいね。
最後に、タマゴケが春の目玉おやじとすると、夏の目玉おやじはギンリョウソウの実でしょうか(写真5)。秋と冬の目玉おやじも探さなきゃ。
【補足解説】
*1 タマゴケとそのなかま
明るい黄緑色の細長い葉を持ち、山地の日かげや岩上に半球状のコロニーを作ります。大阪の低山では、3月頃に球状の蒴(さく)をつけはじめます。
タマゴケを見つけた場所から数m離れたところに、同じような球状の蒴(さく)をつけたコケが生えてました(下左:写真付録1)。蒴の形や柄(え)の色がタマゴケと少し違ってます。葉の形も違いますね。同じタマゴケ科のコツクシサワゴケでしょうか。目玉おやじになるのかな?
*2 コケの繁殖(はんしょく)
コケは、受精(じゅせい)により作られた胞子で繁殖(はんしょく)する有性生殖に加えて、葉や茎(くき)など体の一部からクローンを作って繁殖(はんしょく)する無性生殖も行います。
タマゴケは雌雄同株なのですが、テラリウム栽培では胞子による繁殖は難しいらしく、葉っぱを使った無性生殖で増やす方法が用いられているようです。
*3 タマゴケの仮根の様子
コケは養分や水分をすい上げる根を持ちません。根のように見える部分はコケの体を土や岩に固定する機能を持ち、仮根(かこん)と言われます。
タマゴケでは、黄緑色の葉っぱがついている茎(くき)の下の方で茶色の部分が仮根と思われます(下右:写真付録2)。(撮影後に元の場所に戻しています)
【参考文献】
ときめくコケ図鑑, 田中美穂・伊沢正名, 山と渓谷社(2014.1.24)
ます(2021/3/20)