だいだい色の実をついばむ鳥たちで
にぎわっていたエノキも
すっかり葉っぱを落として
扇を開いたような姿になりました
エノキの根元で
落ち葉をそっとめくってみると
ゴマちゃん(ゴマダラチョウの幼虫)がいるよ!
ゴマちゃんは
夏の暑さが和らぐ頃に
エノキに産み付けられた卵からかえって
葉っぱを食べて大きくなり
葉っぱが枯れて落ち始める頃に
幹を伝って地面に降りてきます
降りてきたばかりの頃は
葉っぱと同じ緑色
次第に落ち葉にまぎれる茶色になって
敵に目立たないように姿を変えます
エノキの落ち葉にくるまって冬を越し(*1)
春になると再び幹を登って
若葉を食べて成長し(*2)
さなぎから蝶へと姿を変え
空を飛び 交尾の相手を見つけて
新しい命をつなぎます
エノキの落ち葉を掃除するおじさんを見かけると
「ゴマちゃんのふとんを取らないで!!」
と心の中で叫んでしまいます
<お願い>
ゴマちゃんを探すときは、葉っぱをそっとめくりましょう。見つけても、さわったり、フラッシュをつけて写真を撮ったり、お休み中のゴマちゃんに刺激を与えないようにしましょう。そして、元通り、落ち葉のふとんをかけておきましょう。
【補足解説】
*1 チョウの冬越し
チョウは、卵→幼虫→さなぎ(蛹)→成虫と姿を変えますが、種類によって冬を過ごすときの姿が異なります。
卵で越冬するチョウとしては、ゼフィルスと呼ばれる樹上で暮らすシジミチョウの仲間がいますが(写真1-1:ウラナミアカシジミ)、大阪では数が少なく、高い樹の上で暮らすこともあり、成虫も卵もなかなか見ることができません。一方、ガになりますが、ウスタビガの卵は、府民の森の雑木林でも時々みかけます。落葉したコナラの枝にぶら下がっている黄緑色の空まゆに卵が産み付けられてます(写真1-2:右側は成虫)。
幼虫で越冬するチョウとしては、ゴマダラチョウと近縁のオオムラサキもエノキの落ち葉にくるまって冬を越します。ゴマちゃんとよく似ていますが背中の突起が4対です(写真1-3)。また、公園や郊外の住宅地でよく見かけるツマグロヒョウモンも幼虫で越冬します(写真1-4:成虫の右側が幼虫、その右側がさなぎ)。ゴマちゃんは冬越し中はまず動きませんが、ツマグロヒョウモンの幼虫は冬でも葉を食べたりして動くことがありますし、幼虫ではなく蛹で越冬することもあります。元々南のチョウで、生息域の北上を続けていて、まだ越冬の仕方を模索中なのかもしれませんね。
さなぎ(蛹)で越冬するチョウとしては、公園や街中でも見かける、モンシロチョウ(写真1-5:右側が蛹)やアゲハの仲間(ナミアゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハなど)がいます。
成虫で越冬するチョウとしては、府民の森の雑木林でときどき見かける、ルリタテハ(写真1-6)やウラギンシジミ(写真1-7:右側は閉じたところ)がいますが、越冬中は草の裏などに隠れていたりして、見かけることはほとんどありません。
*2 チョウの食草・食樹
チョウの幼虫は、種類によって、エサとなる植物の種類が決まってます。
これまで紹介したチョウやガの写真の中にも食草・食樹が映っています。ゴマダラチョウはエノキ(参照:写真4)、ゼフィルスの大半はブナ科の樹、ウスタビガはコナラ(参照:写真1-2)やサクラ、ツマグロヒョウモンはスミレ(参照:写真1-4の幼虫の所)の仲間、モンシロチョウはキャベツなどのアブラナ科、アゲハ(ナミアゲハ)はミカン科、アオスジアゲハはクスノキ、ルリタテハはサルトリイバラ(参照:写真1-6)、ウラギンシジミはクズやフジなどのマメ科といったぐあいで、それぞれの種の進化の中で、食草・食樹を決めてきました。
チョウは卵を産むとき、幼虫がエサとなる葉をすぐに食べられるように、前脚の味覚器官を使って葉をトントンと叩いて(ドラミング)、植物の化学成分を調べて、エサとなる植物かどうかを確かめてから卵を産み付けます。
チョウの中には、一年に何度も成虫から卵への世代交替を繰り返す種類がいます。例えば、ゴマダラチョウは2回、ツマグロヒョウモンやモンシロチョウは4~6回繰り返します。いずれにしても、多くのチョウでは、卵→幼虫→さなぎという一生の中の多くの期間を食草・食樹で暮らします。
(ます 2020/12/26)