先日の森林整備でKさんが”フユノハナワラビが咲いてるよ”と教えてくれました。後をついていくと、ラクウショウの手前に、ヒエ(稗)の穂が実ったような草が一本生えてました(写真1)。
フユノハナワラビはシダの仲間で、胞子を作りだす胞子嚢(ほうしのう)が付く胞子葉を、花に見立てて名づけられてます(ちなみに、英語ではフユノハナワラビの仲間をgrape fernといって、ブドウの房に見立てられてます)。
根元にシダらしい形の葉(栄養葉)が広がっていて、冬の日差しをうけて光合成をします(写真2)。根元には栄養葉とは別の葉の柄がしゅっと上に伸びています、これが胞子葉です(写真3)。胞子嚢も観察してみました(写真4)。茶色の丸いのが胞子嚢で直径0.7mm位です。胞子嚢のまんなかにはこげ茶色の線が入っていて、この線に沿って胞子嚢が開き、胞子が出て風に乗って飛んでいきます。胞子嚢についた白い粉のようなものが胞子で、拡大してみたのが写真4の右上です。思っていたより大きいですね。
でも、なぜ、冬に花(胞子葉)を咲かせるのでしょう?
シダというと、お正月の鏡餅に敷く常緑性のウラジロ(写真5)や、春に若芽を食べる落葉性のワラビ(写真6)などのイメージがあって、花に相当する胞子嚢は夏から秋に作られます。
一方、フユノハナワラビは、常緑性でも落葉性(夏緑性)でもなく、冬緑性という、シダにしては珍しい生態を持ちます。
秋に芽を出して葉を広げ、胞子葉を伸ばして胞子を飛ばし、春から初夏には地上部を枯らしてしまいます。他の植物との競争の中で、冬の日差しを受けて育ち、繁殖する事を選んだのでしょう。近くにあるカタクリも、春になって落葉樹が葉を茂らせる前に、花を咲かせて種を作り、初夏には地上部を枯らしてしまいますが、フユノハナワラビは、日差しの弱い冬の間も葉を茂らせて頑張っています。そういえば、このフユノハナワラビは数年前に下草刈りをした、日当たりのいい場所に育ってました。
今回のフユ(冬)ノハナワラビによって、ハル(春)ジオン、ナツ(夏)ツバキ、アキ(秋)ノタムラソウとあわせて、四季を表す名前の草木をくろんど園地で見ることができました。これからも、身近な自然に四季のうつろいを感じていきたいですね。
余談ですが、フユノハナワラビと同じ仲間のシダに、落葉性(夏緑性)のナツノハナワラビもあるそうです。くろんど園地にもあるのかな?
(ます 2020/11/27)
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