「金剛山の紅葉ハイキング」の下見の時、見たことがない赤茶色のハチが数匹、大きな巣に出入りしている所に出くわしました(下左 写真1)。危ないので早々に立ち去って、帰って写真を見直すとスズメバチのような姿、なんと、「スズメバチより強いスズメバチ」のチャイロスズメバチでした(下右 写真2)。
チャイロススメバチは、働きバチの体長が2cm位とスズメバチの中ではやや小さく、おもに本州中部より北に分布していて、大阪では珍しい種です(ここ20年位で西日本に分布を拡大中です)。
チャイロススメバチの女王バチは、モンススメバチかキイロスズメバチの巣に女王バチしかいない初期の段階で入り込んで、女王バチを殺して巣を乗っ取り、働きバチに自分の子を育てさせます。これは「社会寄生」とい言われ、珍しい生態です。写真3は、チャイロススメバチがキイロスズメバチの巣を乗っ取り、子育てさせているところです。巣の中にはキイロスズメバチの女王バチはもういないので、キイロスズメバチの子は生まれてきません。働きバチが寿命を迎えると、巣の中はチャイロススメバチだけになって、完全に乗っ取られてしまうわけです。
チャイロススメバチは、生物が進化してきた道筋の解析によって、最も近い種がモンススメバチだと推定されています。種が近いと、乗っ取られる側の働きバチも気づかすに子育てしてしまうのでしょうか。でも、モンススメバチやキイロスズメバチの全てがチャイロスズメバチに進化してしまうと、乗っ取り先がなくなってしまうので、どこかで、バランスが取れているでしょうね。
巣を乗っ取る時には、相手の女王バチとの闘いに勝たないといけません。そのため、チャイロススメバチは、あごや毒針からの攻撃にも耐えられる外皮を持っています。
ちなみに、スズバチの巣に卵を産み付ける、オオセイボウという寄生バチも、より大きなスズバチの攻撃から身を守るために、鎧のような外皮を持っています。(写真4)。
ところで、スズメバチが人にとって危険な生物であることはご存知ですよね。実際、毎年20人前後が刺されて亡くなっていたり、養蜂のセイヨウミツバチを襲う敵だったりと、人の暮らしには害となることが多いです。一方で、スズメバチ(オオスズメバチとキイロスズメバチ)には、外来種のセイヨウミツバチが養蜂から野生化しても、日本での勢力拡大を防いでくれるありがたい面もあります。オオスズメバチが生息しない小笠原諸島では、セイヨウミツバチの野生化が増えてハナバチ類を圧迫して、ハナバチに受粉を助けてもらう固有の植物に悪影響を及ぼさないかと懸念されています。
強者と思われたスズメバチが、別の種のスズメバチから寄生されたり、人の暮らしには害とみなされるスズメバチが、外来種のセイヨウミツバチの拡大を防いでいたりと、いきもののつながりは想像以上に多様です。悪役の印象が強いスズメバチのイメージもちょっと変わるかもしれませんね。
(ます 2020/11/12)
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