梅雨時に府民の森を散策することはあまりないのですが、活動再開に向けた目慣らしに、くろんど園地を一回りしてきました。春の林縁にひかえめに咲いていた紫や黄の花と違って、白い花が草木の濃い緑を背景に目立ってました。白い花ではたくさんの昆虫が蜜を吸ったり花粉を食べたりしていましたが、どうも花の種類によって訪れる昆虫の種類が違っているようです。
最初はオカトラノオ、白い花のなかでも、とりわけ、チョウが蜜を吸っている割合が高いように思います。花はアーチ状に垂れ下がり、根元から順に花を上向き・横向きに咲かせていきます。チョウはアーチの一番高いところにとまっています。チョウに人気があるのはアーチ状の花が止まりやすいからでしょうか? オカトラノオの花が盛りを過ぎた頃に、花が直立するヌマトラノオが咲き始めます。虫の種類の違いを比べてみるもの面白そうですね。
(参考:自然の不思議 No. 19 オカトラノオとヌマトラノオ)
次はクリ、イガに包まれたクリの実は知っていても花にはなじみがないかもしれません。この時期の花の中で、昆虫に一番人気があるようです。しっかりした花茎に沿って小さな花をたくさんつけています。穂のように見える部分が雄花、穂の根元の少し大きな花が雌花です。チョウも集まりますが、飛行技術があまり優れてないハナムグリなどの甲虫やハナアブも多く訪れます。この日は、クロハナムグリが何匹も集まって花粉を食べてました。8月の初めころには、雌花の部分が大きくなってクリのイガ(実)になります。
ナツツバキも、大きな花でとまりやすいためか昆虫に人気です。くろんど園地ではモフモフの黄色いコマルハナバチ(オス)が目立ちますが、数週間遅れて咲きだす、ちはや園地ではその時期は他の花が少ないからか、ハナバチ、チョウ、ハナアブ、ハエなどいろんな種類の虫が訪れます。ちなみに、冬のツバキ(ヤブツバキ)では鳥のメジロが蜜を吸いにくる姿をよく見かけます。しかし、ナツツバキを訪れる姿を見たことがありません。メジロは冬から春には花の蜜を吸い、夏は昆虫、秋は果実と季節により食べ物を変えているからだと思います。確かに、ナツツバキの花びらはヤブツバキのようにしっかりしておらず、メジロが足でつかまるには心もとないですね。
今まで紹介した花は、いろんな種類の虫が訪れる花でしたが、次の2つは限られた種類の虫が訪れる花です。
1つ目はホタルブクロ、ホタルを花の中に入れて光らせて遊んだことにちなんで名づけれた花です。これまで紹介した花と違って下向きに咲いています。虫が蜜を吸うためには花の下から入る必要があり、優れた飛行技術を持つハナバチがよく訪れます。以前、ホタルブクロにマルハナバチの仲間が出入りするところが撮れました。ホタルブクロがブルブルと少し動いたあとにマルハナバチの仲間が出てきます。ちょっとユーモラスですね。
2つ目は、ササユリ、くろんど園地ではこの花を目当てに多くのハイカーが訪れます。咲いて間もない頃はおしべのやく(葯)もきれいな状態ですが、少したった花には下側に花粉がたくさんついてます。きっと虫のしわざでしょう。調査研究によるとスズメガやヤガの仲間が夜間に訪れ、長い口を活かして、花の奥にある蜜を吸うそうです。昨年、くろんど園地でゲンジボタルを観察した時、ササユリも見てみましたがスズメガを見ることができませんでした。しかし、近くのツツジにキイロスズメが数匹訪れて蜜を吸っていました。きっと、こんな感じでササユリの蜜を吸っているのでしょう。
花は花粉をつけてくれる虫を誘うために蜜などを提供し、花の形や匂いや色も進化させてきました。外出自粛後の足慣らしに、梅雨時の白いお花を楽しみながら、いきものの不思議に思いを巡らせてみるのはいかがでしょうか。
(ます 2020/06/19)
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