ナガミヒナゲシは道端でよく見かけます。園芸種のポピーのようなかわいい花を咲かせますが、この植物は地中海沿岸の原産で、むかし輸入穀物に混って日本に入って来て、1960年ころ関東で初めて確認されました。
現在では全国に分布を広げています。
名前の由来は、英名のLong-headed popyを日本語にして「長い実の雛芥子」と言うことでナガミヒナゲシとなりました。
芥子と言うとアヘンを想像しますが、ナガミヒナゲシにはその成分はないものの、茎を切ると白い乳液が出て、これにはアルカロイドが含まれるので口にしない方が良さそうです。
ナガミヒナゲシは大変繁殖力が強く、コンクリートやアスファルトの隙間、電柱の際などでも育ちます。最近では農地にも広がっていて、日本の幾つかの自治体では外来植物として駆除が呼びかけられている所もあるようです。
ナガミヒナゲシの果実は写真1. のように長身で頭頂部が蓋になっていて放射状の筋があります。これは柱頭の名残で、この蓋は果実が成熟すると写真2.のように上に反って、下に横長の小窓ができます。
果実を横に切ると7つの仕切りがあり(写真3.)、たくさんの種子が入っています。一つの果実に1000~2000個もあるそうで、サイズは約0.6mmで大変小さく、「芥子粒は小さい」と言うのが良くわかります。写真4.を参照。
面白いのは、果実が風で揺れると蓋の下に開いた小窓から種子が飛び出すようになっていることで、実際に果実を横にして振ると種が飛び出てきます。
ナガミヒナゲシの繁殖力が強いのは、生育場所を選ばないことや大量の種子を作ること、そして小さな種子は水に濡れた靴底や車のタイヤなどに容易に付着して色んな場所に運ばれて行くことにあるようです。
道端に多い理由が良く分かります。
写真2. 果実の外観 写真3. 果実の中
写真4.はナガミヒナゲシの種子がいかに小さいかを示したものです。
写真5.は種子を拡大して見たもので表面に網目状に見える凹みがたくさん
あります。
尚、種子は翌年すべてが発芽するのではなく、翌年以降に発芽するものも
あり長期に生き残るようです。また未成熟な種子でも、後熟して発芽能力を
持つと言われているので、これも繁殖力が強い一因だと思われます。
写真4. 種子の大きさ 写真5. 種子の拡大
2020/5/27 (T.T)
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