No.51 白鷺(しらさぎ)の婚姻色

写真1.田んぼにたたずむ鷺の仲間たち
写真1.田んぼにたたずむ鷺の仲間たち

 田んぼに水が張られる季節になりましたね。田んぼに白鷺がたたずむ姿はなじみのある風景かと思いますが、大きさや色合いの違う鳥が混ざっている事に気づかれたことはありますか。白い鷺には、大きい順に、ダイサギ・チュウサギ・コサギと呼ばれる種類があり、これらを総称して白鷺(しらさぎ)と言います。これに亜麻色のアマサギと青灰色のアオサギを加えた、5種類くらいが昼間に田んぼや池・河原で見かける鷺の仲間になります(注1)。

 写真1の田んぼでは、左からチュウサギ、コサギ、アマサギが写ってますが、大中小といっても個体差があったりしてなかなか見分けにくいです。くちばしの長いダイサギは魚を、短いチュウサギやコサギは昆虫や両生類をつかまえるのに適していると言われています。”むずかしや どれがシジュウカラ ゴジュウカラ(小林一茶)”に例えると、”ややこしや あれがダイサギ これがコサギ 残りがチュウサギ?”と言ったところでしょうか。

 さて、大中小の識別は野鳥図鑑に譲るとして、白鷺や鷺の仲間に婚姻色があるのはご存知でしょうか? 婚姻色(こんいん色)とは、繁殖期に一時的に現れるからだの色や斑紋のことで、鳥以外では、魚のサケやトノサマガエルが良く知られています。

 写真2~5の婚姻色は4月~6月にかけて撮影したもので、ぞれぞれ、ダイサギ、コサギ、アオサギ、アマサギ(注2)の婚姻色(写真の右側)を、婚姻色が現れていない個体(写真の左側)との比較で示しています(注3)。目の先、くちばし、脚の色、足先などが鮮やかになったり、赤みがかったりと変化しています(写真を拡大して見てみると、ダイサギとアオサギは目の縁が充血しているように赤くなっていることもわかります)。なかなか美しいと思いませんか? ところで、婚姻色というと、オスがメスを引き付けるために自らを目立たせるような感じがしますが、鷺の婚姻色はオスにもメスにも現れるそうです。男女がおめかしして街にでかけるみたいなものでしょうか。

 繁殖期(4月から8月)に入ると、白鷺は他の種類の鷺と集まって繁殖する場所(集団繁殖地)を作ります。大阪市自然博物館の調査によると、1960年代までは、世界遺産の仁徳天皇陵が数万羽の集団繁殖地になっていたそうですが、90年代以降は、大きな繁殖地はなくなり、小さな繁殖地が多数できているそうです。

 写真6は、7月中旬、奈良県にある古墳の集団繁殖地の様子です。山の中腹ではダイサギが、お掘の水面付近ではコサギが中心になり、アオサギ、アマサギ、夜行性のゴイサギに、チュウサギらしき姿も見えて、数百羽はいそうで圧倒されます。樹上に枝や草などを用いて皿型の巣をつくり産卵しています。既にかなり大きな幼鳥の姿も見えますし、親鳥は冬羽に替わり、ダイサギのくちばしが黄色になってます。しかし、これだけの数になると、鳴き声や糞害も多く、大量の糞が木を枯らしてしまうこともあり、別の古墳では近隣住民からの苦情で樹木を伐採して繁殖地にできないようにしたらしいです。なかなか共存は難しいですね。

 街中育ちの私でも、水がはられた田んぼに白鷺がたたずむ姿は、どこか懐かしさを感じる癒しの風景ですし、近くの池や河川敷で婚姻色の白鷺をみかけると素直に美しいなと思います。身近な鷺という鳥を通じて、自然についていろいろと感じてもらえれば幸いです。(ます 2020/5/3)

 

注1)正確には、ダイサギには冬鳥のダイダイサギと夏鳥のチュウダイサギがいます。この記事に写っているダイサギはチュウダイサギと思われますが、とても私には違いを説明できそうにないので、興味のある方は、南港野鳥園の記事をご覧ください。

http://www.osaka-nankou-bird-sanctuary.com/o.n.b.s_web/top_cont2/chuudaisagi/chudaisagi.htm

 

注2)写真4.アマサギの婚姻色:su nekoさんの美しい写真を引用させて頂きました。(CC BY-SA 2.0)

https://www.flickr.com/photos/suneko/151198764/ 

 

注3)チュウサギの婚姻色は目の先が鮮やかな黄緑色らしいですが、あいにく見たことがなく、また、掲載が許される写真がみつかりませんでしたので、ここには掲載していません。ご興味のある方は、”チュウサギ 婚姻色”で検索してみてください。

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