昨年末に、くろんど園地の森林整備活動地を巡回していた時、サクラのような木肌のコナラを何本か見つけました。鮮やかな紅色に紅葉し、うち何本かは赤銅色で艶のある桜皮の茶筒のような木肌でした(写真1)。
この一帯は何年か前に山火事があったところで、その影響かなとか思いましたが、調べてみてもわからないので、SNSで広く尋ねてみました。すると「コナラには、サクラ肌といわれるものがあって、原木しいたけがよくできる。ただ、この写真ほどサクラに近いものは見たことがない」と教えてもらいました。これを頼りにしらべてみると、文献(参考文献)が見つかり、以下のようなことがわかりました。
①コナラには樹皮の割け具合や厚さによって、オニ肌/イワ肌・フツウ肌・サクラ肌などに分けられる。
②若いときはサクラ肌が多く、年をとるにしたがってオニ肌/イワ肌が増える。ある林では30年生以上になると全部がオニ肌/イワ肌だった。
③直径10cmのコナラの例では、地際から下部にオニ肌/イワ肌が多く、中部に移行するにしたがってフツウ肌が出現し、さらに中部から上部にかけてサクラ肌が現れ、先端部は全部サクラ肌となっていた。
④コナラの樹皮形態とシイタケの発生量とは密接な関係があり、「サクラ肌」はよく発生するがオニ肌/イワ肌の原木は発生量が極めて少ないといわれている。
私たちが齢を重ねるにつれて、シミやシワが増えてくるのと似てますね。ちょうど、森林整備でコナラを玉切りする機会があったので、先端部を切ってもらって比べてみました(写真2)。確かに下部は割け目が深くて数も多いオニ肌ですが、先端部はサクラのような木肌です(写真2下)。以前に切ったサクラ(写真2上)と比べてみてもよく似てます。
コナラのサクラ肌は成長した木の先端部や若い木で見られることがわかりました。生駒山系は樹齢30~50年位のコナラ林で、路を歩いていて目にするのはオニ肌ばかりです。大きく成長したコナラの先端部を目にすることがなかったのでしょう。今回、サクラ肌のコナラが多く見られたのは、尾根づたいの道で、木の先端部が目に付きやすい場所だったからですね。もうひとつ、この場所がちょうど送電線の直下にあって、定期的に幹や枝が剪定されていたことも影響してそうです(写真3)。齢を重ねても、定期的に剪定されるので、若い木のような肌が維持されているのかもしれません。
では、若いコナラは他の場所にはないのでしょうか?少し散策してみると林縁で見つかりました。直径2cm位のコナラが道沿いササ原の端に数本育っていました(写真4)。幹は細いですが、確かにサクラ肌です。このあたりは数年前にササ刈りをしたところなので、もしかするとササ刈りでうまく日が当たるようになって成長できたのかもしれません。ササ刈りといい送電線下の剪定といい、人の手が入ることが森林に影響を与えることを観察できたのはちょっと興味深いです。
一方、大きく育ったコナラの林の中には、若い木が育っているようには見えません。ナラ枯れや台風で木が倒れてできた空間に芽生えたコナラが、何十年かかけて育ち、コナラの林が代替わりしていくのでしょうね。
冬場は里山への足が遠のきがちですが、葉を落とした雑木林では、野鳥が見やすく、樹形や冬芽の観察も楽しめます。天気のいい日に散策してみてはどうでしょうか、新しい気づきがあるかもしれません。あと、サクラ肌のコナラに原木シイタケができやすいことも、機会があれば試してみたいところです。(ます 2020/1/25)
参考文献:橋詰・脇田 シイタケ原木育種の基礎となるコナラ樹皮の形質の変異 広葉樹研究No. 2 27~40 (1983)
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