ヘクソカズラはどこにでも見られる植物です。空き地のフェンスや園地の林縁で他の植物に絡まって伸びているのを良く見ます。
ヘクソカズラは葉をちぎったり、実を潰したりすると臭いにおいがするのでよく知られていますが、万葉の時代にはクソカズラの名で呼ばれ万葉集にも詠まれています。このにおいは、メルカプタンと言う物質(硫黄化合物)で人のおならや便にも含まれていてスカンクが出すにおいと同じ成分だそうです。
臭いので不人気なヘクソカズラですが、意外と知られていないのが花です。余り目立ちませんが写真1.のように可愛い花を咲かせます。灸(やいと)をした後の灰を押し付けた形に似ているのでヤイトバナとか、花が早乙女(田植えをする女性)が被る笠に似ているのでサオトメバナとも呼ぶそうですが、こちらは今一どこが早乙女の笠に似ているのか良く分かりません。
さて、においの話に戻りますが、ヘクソカズラは何故そんなに臭いのでしょうか? ものの本には、ヘクソカズラはこのにおいで外敵に葉や実を食べられないようにしていると言われているのですが、実際にはヘクソカズラの葉を食べる生き物がいます。写真1.の右下の写真を見て下さい。葉が食われた跡があります。
調べてみると、ホウジャク(スズメガの仲間)の幼虫がヘクソカズラの葉を食べるとのこと、他にもヘクソカズラヒゲナガアブラムシやヘクソカズラグンバイ(まだ見たことがありません)がヘクソカズラに寄生して吸汁するようです。
ヘクソカズラは秋には実が茶色に熟します。(写真2.参照)
実の頭に5つのトゲの様なものが見えますが、これは萼片の名残らしく、実は萼に包まれていると言うことになるそうです。
ところでヘクソカズラの青い実は潰すと臭いですが、不思議なことに熟した実は潰してもにおいはしません。そこでどんな種が入っているのか調べてみました。先ず実の殻をむくと写真3.のようにモモの果実のような形をした種が見えました。少し力を加えると2つに分かれます。ゼリー状の滑り(ぬめり)を取り除くと、写真4.の様な半月形で片側が凹んだUFOのような面白い形の種が出てきました。
ヘクソカズラはどこにでも生えていますので、野鳥が実を食べてどこかでフンをすることによって種が運ばれているのだと思いますが、ヘクソカズラの熟した実は臭くないので野鳥も食べやすいのかもしれません。
ヘクソカズラは臭いと言わずに実を見つけたら種の形を観察して見て下さい。
(2019/11/22た)
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