金剛山樹氷まつりの日・2018年2月4日、バス停からロープウエイ乗り場に向かう途中、積もった雪の上に小さくて黒っぽい虫を発見しました。形状からカワゲラであることはわかりましたが、雪国や山岳地帯の雪渓で見られるセッケイムシ(雪渓虫)とは少し違うように思われました。雪の上を歩き回るセッケイムシは幼虫で、翅(昆虫のハネはこの字を当てます)が無かったように記憶していたのですが、この虫には翅があったからです。しかし、雪の上にいるわけですから、間違いなくユキムシです。今回調べてみて判ったのですが、以前に見たことがあるセッケイムシは幼虫ではなく、成虫で翅がない種類でした。カワゲラの幼虫は水中生活者(水棲昆虫)で、鰓(エラ)呼吸をしていますので、地上を歩き回ることはありません。この虫も、1年から数年にも及ぶ幼虫期を、金剛山の渓流で過ごしたことでしょう。幼虫期の長さは、育つ温度や得られる餌の量によって変わります。
この虫は、体長:7mm程で、二本の尾が見られることから、昆虫綱・カワゲラ目(襀翅目:旧分類)・クロカワゲラ科・Capnia属の一種で、由緒正しいユキムシであると言えます。ちなみに、体長は、頭から腹部先端までの長さで、尾や翅が長く伸びているものは含みません。種類は、形状と生息地域から、ヤスマツクロカワゲラではないかと思われますが、断定はできません。セッケイムシ(セッケイカワゲラ)も同じクロカワゲラ科(属は違います)の昆虫ですが、こちらは、この虫より少し大型です。クロカワゲラ科の仲間は、ユキムシとして、わが国では中部地方以北でよく見かけられるようです。大阪府下では、雪の多い金剛山でしか「ユキムシ」に出会えないのかもしれません。晴れた日には、太陽光を吸収しやすい黒い体のユキムシは、上手く体温を上げて雪の上を元気いっぱいに動き回るのですが、あいにく、この日は曇り空(その時の気温は氷点下)でしたので、変温動物である昆虫・ユキムシは動くことができませんでした。そこで、観察した後は、人に踏まれない場所に、そっと置いてきました。
さて、カワゲラによく似た名前の虫にトビケラ(トビケラ目、毛翅目:旧分類)がいます。カワゲラも、トビケラも、ともに幼虫期は川の中で過ごしていますが、両者は幼虫、成虫ともに形態がかなり違います。特に幼虫期、カワゲラは川底をウロウロ歩いて餌を探していますが、トビケラはミノムシのような巣や、粘性の高い巣の中に入っていて動きは緩慢です。成虫ですが、カワゲラは画像の通りですが、トビケラは「旧分類の毛翅目」そのままに、翅に毛が生えています。両者とも、地中に潜って生活している「ケラ(おけら)」とは全く違う虫ですが、昔の人は近縁種だと思っていたようです。ケラはバッタ目(旧分類:直翅目)ケラ科の昆虫です。旧分類による昆虫の目(もく)は、主として翅の形状によって名付けられていましたが、現在の分類では、代表的な昆虫名を充てることになっています。
「大阪府下でユキムシに出会えるなんて・・・」生物と出会う度に、まだまだ知らないことが多いのに気付かされます。なお、画像はOさんとUさんが撮影されたものを使わせて頂きました。(ちはやのqael)
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