あちこちでホトトギスの鳴き声が聞こえる初夏のくろんど園地、八ツ橋の近くのカタクリの森でカタクリの種子を運ぶアリの様子を観察してきました。
カタクリは受粉がうまくいくと、前から見ると正三角形の実を付けます。実の中は3室に分かれていて、長さ5mm位の種子が10~30個位でてきます。種子ができる頃には、実が乾いて、先の方から裂けてきて中に入っていた種子がこぼれ落ちんばかりになります。
(写真1)
しかし、カタクリの森では、先が裂けて半分くらい種子が落ちてしまった実はいくつも見つかるのですが、その実の近くの地面を探しても、落ちたはずの種子が全く見つかりません。
実はカタクリの種子には、アリが好む物質を含むエライオソームと言う付属体が先っぽに付いていて、アリが種子を巣に運んでしまうのです。試しに、実に残っていた種子を8個ほど地面にまいてみると、ものの数分でアリに見つかり、30分とたたずに、すべて運び始められました。(写真2)
また、山側の少し奥まったところを観察してみると、先が少しだけ裂けた実にアリが群がっているところが見つかりました。
2時間ほどして、再び見てみると、アリが身を切り開いて中の種子をせっせと運び出していました。(写真3)
ところで、アリは、カタクリの種子を巣に運び込むのですが、エライオソームを餌として切り出して、種子の残りを巣の外へ捨てるらしいのです。今回は巣の外に運び出すところまでは観察できませんでしたが、カタクリはアリの助けを借りて、種子をより広い場所に散布する仕組みを持っているのですね。
カタクリは、春の3月~5月の間だけ、地上に葉を出し、可憐な花を咲かせる"春の妖精"として人気があり、何年もかけて栄養を蓄え、ようやく7~8年目に花を咲かせることは良く知られていますが(下図)、花を咲かせたあと、アリと共生関係で種子を散布する仕組みも大変興味深く、気の遠くなるような長い年月をかけて築き上げてきた仕組みの重さを感じました。
来春、今年できた種子から新しい芽生えがあることを楽しみにしています。(2017/5/31 ま)
カタクリの生活史 (図を拡大してご覧ください)
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