No.141 弱肉強食の世界へようこそ1

 12月にもなると虫たちも姿を消してしまいます。そこで今回は小さな虫たちの弱肉強食の世界をのぞいてみたいと思います。私がくろんど園地でみた食うものと食われるものの実態です。気の弱い方はご注意ください(笑)。

 

カマキリがヒグラシを捕食しているところ
写真1 カマキリがヒグラシを捕食しているところ

 トップバッターは昆虫界の殺戮者カマキリです。共食い有り、メスがオスを食べるなど、その悪役ぶりは有名です。写真1はカマキリ(たぶんオオカマキリの幼虫)がヒグラシを捕まえているところです。ヒグラシはギーギーと鳴いて激しく暴れていますが、カマキリの鎌(前脚)でガッチリ捕まえられているので逃げることができません。恐ろしいですね。あとで写真を見て気が付いたのですがヒグラシの腹部に白いものがくっついているのがわかります。セミヤドリガの幼虫です。セミに寄生する珍しいガですが、また別の機会に紹介させていただきます。

 2番手は網を使った狩りの名人、ジョロウグモです。大きな網を張るのでいろんな虫を捕まえます。写真2はアカウシアブを捕まえているところです。ジョロウグモが2匹いますが、小さい方は子供ではなくてオス(成虫)ですね。ジョロウグモでも交尾の時にオスがメスに食べられることがあるようです。写真3ではアカトンボが捕まっています。写真4はヒグラシに嚙みついているジョロウグモです。おなかも大きくなっているのでかなりの虫を食べたのでしょうね。それにしても噛みつかれて痛そうです。写真5はオオスズメバチの頭と翅がクモの巣に引っ掛かっていたところです。最強のオオスズメバチもクモの巣からは逃れられなかったのでしょうか。南無阿弥陀仏。

ジョロウグモに捕まったアカウシアブ
写真2 ジョロウグモに捕まったアカウシアブ
ジョロウグモに捕まったアカトンボ
写真3 ジョロウグモに捕まったアカトンボ

ジョロウグモに捕まったヒグラシ
写真4 ジョロウグモに捕まったヒグラシ
クモの巣に残ったオオスズメバチの頭
写真5 クモの巣に残ったオオスズメバチの頭

  3番手は網を張らないクモの仲間です。待ち伏せしたり、追いかけてエサを捕まえます。写真6はコアシダカグモがヒグラシを捕まえているところです。名前に”コ(小)”がついていますが大型のクモになります。森林に生息し、見かけはタランチュラのようですが、毒は持っていません。写真7のクモの種類はわからないのですが、イチモンジカメノコハムシを捕まえているところだと思われます。体液を吸われたのか、ハムシは干からびたミイラ状態です。ヒ~。

ヒグラシを捕まえたコアシダカグモ
写真6 ヒグラシを捕まえたコアシダカグモ
イチモンジカメノコハムシを捕まえたクモ
写真7 カメノコハムシを捕まえたクモ

 写真8はシラヒゲハエトリグモがヨコバイと思われてるものを食べているところです。ハエトリグモの仲間は丸い大きな目をしているので、かわいらしく、私の好きなクモです。見かけたらピョンピョン跳ねて移動する姿も見てください。写真9はワカバグモ(カニグモの仲間)がハエを捕らえたところです。全身緑色が葉の擬態になっているのでしょうか。

ヨコバイを捕まえたシラヒゲハエトリグモ
写真8 ヨコバイを捕まえたハエトリグモ
ハエを捕まえたワカバグモ
写真9 ハエを捕まえたワカバグモ

 写真10はクモ自身が写っていないのですが、ハナグモが自分よりも大きなウラナミジャノメを捕食しているところです。ハナグモの得意な忍法花隠れ(花に隠れての待ち伏せ)ですね。

ウラナミジャノメを捕まえたハナグモ
写真10 ウラナミジャノメを捕まえたハナグモ

 今回はこの辺で終わりにさせていただきます。一度では紹介しきれなかったので、次の機会にはハチやアブ、トンボなどによる捕食の様子を紹介したいと思います。今回紹介したカマキリやクモもさらに上位の強者に狩られてしまいます。自然は厳しい世界であることがよくわかると思います。 ところで、皆さんは生態系ピラミッド1)をご存じでしょうか。ピラミッドの上位ほど強者で下位が弱者にあたり、下位に行くほど生物量が多いことを模式的に示しています。つまり、多くの生物を維持していくためには広いすそ野(多くの弱者)が必用ということを示しています。また、その弱者を養うための豊かな自然環境がもっとも重要であると思います。くろんど園地という狭い世界ですが、これからも昆虫たちの世界を観察し、この自然環境の維持に努めていきたいと思います。興味のある方は日本パークレンジャーの門を叩いてください。

    1)https://www.nhk.or.jp/kokokoza/seibutsukiso/assets/memo/memo_0000009309.pdf 

 (2024/12/6 大西)

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