夏の終わり頃、くろんど園地の草むらを歩いているとチキチキと音を立てて飛び去る昆虫がいます。皆さんもよくご存じのショウリョウバッタです。バッタ界のスーパースターといえば、このショウリョウバッタかトノサマバッタだと思います。今回はくろんど園地でも出会うことのできるショウリョウバッタ(写真1)を紹介します。
ショウリョウバッタはバッタ目バッタ科の昆虫で、日本に生息するバッタの中では最大種になります。オスよりもメスの方が大きく、約8cmにもなります。ちなみにチキチキと飛ぶのはオスだけのようです。前ばねと後ばねを打合せてチキチキと音を立てています。私もショウリョウバッタが逃げるときに音を立てるときと立てない時があると思い、不思議に思っていましたが、調べてみて納得しました。ショウリョウバッタはスリムな体型で頭部が円錐形なので見間違うことはありません。
色は緑が多いですが、中にはスジ模様が入ったもの(写真2)、褐色のもの(写真3)などもいます。枯れかけた草や枯れた草への擬態と思われます。草と同じ色(保護色)、細長い体なので、草むらで動かない(飛ばない)でいると見つけられないですネ。写真4の中にもショウリョウバッタがいますが、皆さんは見つけられるでしょうか?
写真2 写真3 写真4
ショウリョウバッタはイネ科の植物を食べています。皆さんも子供の頃にショウリョウバッタを捕まえた経験があると思いますが、腹を持つと口から液体を出したり、長い後ろ脚(あし)を持つと暴れて脚がもげたりするので、捕まえるときは脚と胴体を同時に優しく持ってあげてください。
バッタというと、秋というイメージですが、7月頃から幼虫を見ることができます(写真5)。幼虫といっても親と同じ姿で翅(はね)が短いだけなのですぐに親子だとわかります。子供が親と同じ姿ということは、そう、バッタは不完全変態の昆虫です。不完全変態とはチョウやカブトムシのような蛹(さなぎ)の時期がなく、子供(幼虫)がそのままの形で、脱皮を繰り返して大人(成虫)になるような昆虫の変態の一つです。
不完全変態の昆虫は進化的には古いタイプで、恐竜時代(約2億年前)よりも古い約3億年前にはバッタの先祖がいたようです。その意味ではバッタは生きた化石1)ですね。ちなみに翅をもった昆虫で最も古い時代に出現したのはバッタ以外にはトンボやゴキブリの先祖になるようです。もちろん、トンボもゴキブリも不完全変態の昆虫です。よく大むかしの動物図鑑などで古代のトンボ(メガネウラ)やゴキブリ(プロトファスマ)がでてきますよネ。
ショウリョウバッタは環境省自然環境計画課が選定した指標昆虫20種2)の一つとして取り上げられています。いわゆる普通種ですが、くろんど園地でショウリョウバッタが見られるということは、良い草地がくろんど園地には存在しているということの証になっています。
ショウリョウバッタは土中に産卵し、卵で越冬します。翌年の6月頃ふ化するとその形で大きくなり、卵を産むと11月頃にはいなくなります。1年の一生ということになります。短い一生を精一杯生きているショウリョウバッタを見かけたら優しく見守ってあげてください。草原は全国的には減少しているようです。日本パークレンジャー協会では園地内の草刈りを通してショウリョウバッタの住める環境を維持しています。皆さんもこの活動に参加してみませんか。
1) 古生代でのバッタの先祖が現在と同じ形態であったかどうかは調べてみても情報がありませんでした。古生代には出現していたということで”生きた化石”という言葉を使用しました。ちなみにトンボやゴキブリの先祖は化石から現在と同じ形態をしていたようです。また、バッタ(目)とゴキブリ(目)、カマキリ(目)は進化的に近縁で親戚筋にあたります。
2) 指標昆虫のURL
(2024/8/5 大西)