ニホンアカガエルは日本の固有種のカエルで普段は水辺の草むらや森の落葉の下などで生活し、ミミズやクモ、小さな昆虫類を食べて生きています。
ニホンアカガエルは真冬の1月末頃から産卵をするカエルとして知られていますが、今号ではその生活史を写真で見て行きたいと思います。
1. 成体
大きさは数センチくらいで、写真1、2のように体は人の肌に近いような色で足に模様のあるものもいます。特徴は背中にある二本の線(背側線と言う)がほぼ平行になっていることです。よく似たヤマアカガエルがいますが、こちらは背側線が目の下あたりから内側にくびれているので区別できます。
写真1. 2016/4/2 八ッ橋 写真2. 2024/2/24 さんさくの池
2. 鳴き声
ニホンアカガエルの鳴き声をお聞きください。
(くろんど園地さんさくの池で収音)
3. 産卵
ニホンアカガエルは冬眠しますが、厳冬の1月末頃から一時的に目覚めて産卵を始めます。場所は日当たりの良い水の流れが少ない止水域で、雨の降る夜に産卵します。これは天敵(※参照)の少ない季節、時間に産卵することにより生存率を上げるための行動で、産卵はオスがメスに抱接して行われます。
一つの卵塊には500~3000個の卵がありますが、水場が少ないと産卵は一か所に集中して写真5のように多数の卵塊ができます。
※成体の天敵: 昼間はヘビ、カラスやサギ、夜はアライグマやタヌキ、フクロ
ウなど。
写真3. 産卵した親と卵塊 写真4. 新しい卵塊
4. 孵化
3月も末頃になり、水が温むと孵化が始まります。写真6は孵化したばかりのオタマジャクシが卵塊の上に一杯群がっているところです。運悪く産卵した水場が干上がることがあり、孵化する前に死滅してしまうこともあります。
5. オタマジャクシ
オタマジャクシは雑食性で何でも食べますが、春先はまだ動物質の餌は少なく水の中の藻類を食べて大きくなります。
孵化した黒だかりのオタマジャクシですが、4月から5月になると急速に数が減ってきます。ニホンアカガエルの産卵場所にはヤマトサンショウウオの幼生やイモリ、ヤゴ、ザリガニなどの天敵がいて捕食されるからです。
6. 幼体の上陸
写真8. 足が出たオタマジャクシ 写真9. 上陸したニホンアカガエル
オタマジャクシは成長すると写真8のように後ろ足が生え、次に前足が出て段々カエルの形になり、えら呼吸から肺呼吸をするようになって水中生活から上陸して陸上で生活するようになります。
写真9は二ホンアカガエルの幼体が上陸していますがまだ尻尾が残ってます。
カエルは3億6000万年前頃に陸上生活を始めたと言われていますが、肺呼吸ができるようになっても完全に水がない生活はできません。皮膚呼吸もしていて常に体が濡れた状態を保つ必要があるので常に水場と陸を行き来する必要があります。
近年カエルの絶滅危惧が指摘されていますが、かつては田んぼがカエルの大きな繁殖・生活の場でした。しかし、農薬による減少や、圃場や水路の整備で水陸の環境が分断されて生息域はどんどん狭まっています。
カエルの減少は、他の生きものの生存に大きな影響を与えます。たくさんのオタマジャクシですが、他の生きものに食べられて生き残るのはごくわずかです。希少なヤマトサンショウウオやアカハライモリ、トンボのヤゴ、ヘイケボタルの幼虫などはオタマジャクシを餌にしています。またカエルを食べるヘビ、サギ、フクロウなどもいます。
府民の森の水辺の環境保全はカエルのみならず全ての生きものをまもることにつながっています。 (2024/6/1 T.T)