8月も末頃になると園地のハイキング路沿いでクモの巣を多く見かけます。クモの巣の主はジョロウグモで、メスは夏から秋にかけて産卵のために急速に成長します。特徴は背中が黄色で青黒い縞(写真1)があり、腹も黄色と黒の文様でお尻が赤く、足も虎ロープと同じ配色(写真2)になっています。このような立派な姿から「上臈(じょうろう)」--江戸時代に幕府や大名に仕えた奥女中の高位の女官--に見立てられジョロウグモと名前がつけられました。
クモはよく昆虫と間違えられますが昆虫ではありません。昆虫は体が頭・胸・腹の3つに分かれていますが、クモは頭と胸が一体で、あとは腹部となっています。また足は昆虫が6本ですがクモは8本で触角はありません。
ジョロウグモの巣には大体大きいクモと小さいクモが見られます(写真2)。大きい方はメス、小さい方はオスでオスは産卵期になるとメスと交尾を試みますが、時にはメスに食べられることもあります。
ジョロウグモの巣
ジョロウグモの巣は大きいものだと1mくらいにもなり、写真3のように音楽の五線譜のように見えるものもあります。時間が経って巣が破れると補修して使います。またクモがいる網の前後には別の網も張られていて、餌の保管場所にも使われるので巣は複雑です。
クモの巣は縦糸と横糸で作られますが縦糸は粘着性がなく、横糸には粘着球が付いていて飛んできた獲物が引っ付くようになっています。クモ自身は縦糸の上を歩くようにしているので引っ付くことはありません。
クモの糸は腹部の吐糸腺(としせん)から出ますが、用途によって7種類の糸を使い分けています。
ジョロウグモがいる森
皆さんの家の近くではクモは見られるでしょうか?
家の中にハエトリグモや、窓枠の下や庭の植木に小型のクモの巣を見ますが、ジョロウグモは見ることはありません。
ジョロウグモが生きていくためには、クモの巣を張る広い空間と背の高い草木や、餌となる昆虫がたくさん必要です。しかし近年、身近にあった草地や山林が宅地や商業施設に変わり、又田畑に使用される農薬のせいで昆虫が激減してジョロウグモの住める場所や餌か少なくなっているのです。
ジョロウグモは環境の自然度を測る指標生物と言われています。ジョロウグモは大きな巣をつくるので見てすぐわかります。また昆虫のように移動せず、一か所にとどまるので数量も確認がしやすいのです。
ジョロウグモがたくさん見られる府民の森は自然度が高い環境で、色々な生きものが住んでいる自然豊かな場所ということになります。
クモは一見すると気持ちが悪いと思ってしまいますが、ジョロウグモがたくさん見られることの意味が解ると何か身近な存在に思えてきます。
(2023/8/21 T.T記)
参考資料:1. 中公新書「クモの糸のミステリー」大崎茂芳著
2. 繊維学会誌 62巻2号 クモの糸の秘密
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