No. 18 ミズバショウの種
くろんど園地のミズバショウは、今から10年ほど前(2006頃)には100株程でしたが、年々株数が増えて今では千株近くになっています。ミズバショウは株分かれや実生で増えますが、その種子がどんなものなのか調べてみました。
ミズバショウは白いモノが花だと思っている人が多いと思いますが、実はあれは花ではなく苞(ホウ)と言って葉の一部です。本当の花は白い苞の中心にある棒状のもので黄色い粒々に見えている部分です。これを肉穂花序(にくすいかじょ)と言います。
尾瀬のミズバショウは高地にあり初夏に花が咲きますが、低地では4月初旬に咲きます。春のミズバショウは清楚に見えますが、夏になると大きく葉が伸び数十センチから1mの大きさにも成長して8月には枯れて行きます。
さてミズバショウの種子の話に戻りますが、ミズバショウは6月下旬頃には、花つけていた肉穂はこん棒のようになって地面に倒れます。
成熟した肉穂は外側はマツボックリ状(柱頭の名残)ですが、中はおからの様に柔らかく簡単にボロボロと崩れます。つぶしていくと、おからにまぶれた固い種子が見つかりました。種子はゼリー状のものに包まれていて4mm前後の楕円形で片側を押しつぶしたような形をしています。
調べた肉穂から出てきた種は数個あるかないかでした。恐らくミズバショウの咲く時期はまだ昆虫も少なく受粉率が低いことが原因だと思われます。ある本にはミズバショウは風媒花だとありますが、受粉については良く分かりません。
近年、八つ橋では春に実生から育ったと思われるミズバショウの一年生が見られますが、親株が増えたことで生産される種子数も多くなるので、ミズバショウの種子を採取できればそれを撒いて増すことができそうです。(H28/7/13た)
八ツ橋から駐車場に向かう管理道沿いの水辺にもミズバショウを増やしたいと言うことで、2018年の7月に、ミズバショウの肉穂を幾つか採取し、バラバラにして八ツ橋の上流に撒きました。
2019年6月には3株の実生が確認できましたが、期待したより少ない数でした。
あらためて調べてみると、種子の周りに付着物があると発芽し難いとのことが分かりました。そこで今回は採取した肉穂をバラバラにして水で綺麗に洗い種だけを取り出すようにしました。
ミズバショウの種子はゼリー状のもので覆われていて、水に浮かべると全体がぬめって種子だけにするのに時間がかかります。ふるいに入れ、流水にさらして何度も種子を擦り洗いし、ようやく種子だけにすることができました。
種子は、水に浮かべて置いておくと2~3週間で芽が出るとのことで、6/24から自宅で発芽を観察しました。上手く芽出しできればミズバショウ3000作戦(ミズバショウを3000株に増やす)として園地に撒きたいと思います。(2019/6/30た)
種子の取り出しの様子
2019/7/17 種子採取から2~3週間後の発芽の様子
写真➄ 写真⑥ 写真⑦
6/22にミズバショウの種子を持ち帰っていただいていたNさんより、7/7にミズバショウの芽が出てきたとの連絡が入りました。写真➄の状態で丁度2週間ほど経っています。こちらのものはと言えば、2週間を過ぎてからようやく芽が出てきました。写真⑥で➡は芽が出てきたもの。➡は芽が出るところが膨らんできたものです。(2019/7/12頃の様子)
発芽の様子を時系列で並べてみました(ただし同一の種子ではありません)。
水に浸けて約2週間経つと、種子の中央部に赤い点の様なものが現れ、それがふくれてきて、明らかに芽とわかるようになります。早いものは芽が出始めました。3週を過ぎると芽が青みを帯びて伸びてきました。更に芽の下部には白い突起物が出てきて第4週になるとハッキリ根だと分かるようになります。
ミズバショウの種子の発芽率は良く分かりませんが、種子が発芽する期間は相当幅があるようです。2~3週で発芽のしたものは全体数からすると1~2割程度で、5週目に入った7/23現在でも未発芽のものも多く、ようやく芽が出かけたものなどバラバラです。
推測ですが、発芽期間に幅があるのはミズバショウの子孫を残す戦略なのかも知れません。ミズバショウの種子は水によって運ばれますが、流されていく内に時間差を持って発芽すれば、色々なところに種子の分散が可能となり、子孫を広げる可能性が増えることになるのかも知れません。(2019/7/23た)